はじめまして、宮崎陽介と申します。
人事・組織コンサル会社でワークエンゲージメントの領域を担当しています。
前職は大手メーカーの経営企画部でした。
数字を追いかける毎日の中で、ある時期、自分の仕事がとにかく「つまらない」と感じるようになったことがあります。
仕事内容が嫌いなわけではない。
人間関係が悪いわけでもない。
ただ、同じことの繰り返しに感じられて、朝の通勤電車が憂鬱で仕方なかった。
その時の僕は「まあ、仕事ってそんなもんだろう」と放置しました。
結果として、あの時期に失ったものは小さくなかったと今になって思います。
今回は、そんな自分の経験と、組織コンサルとして多くの企業を見てきた立場から、「仕事がつまらない」を放置するとどうなるのかを率直に書いてみます。
あわせて、転職という大きな決断の前に試せることについても触れていきます。
Contents
「仕事がつまらない」は珍しいことじゃない
最初にお伝えしたいのは、仕事がつまらないと感じること自体は決して特別なことではない、ということです。
むしろ、かなり多くの人が同じ感覚を抱えています。
リクルートが実施した「働く喜び調査2024」によると、働く上で「喜び」を必要としている人は82.6%にのぼります。
一方で、実際にそれを感じている人は42.0%にとどまっています。
つまり、4割以上の人が「喜びが欲しいのに、感じられていない」状態にあるということです。
しかもこのギャップは、12年間ほぼ変わっていないそうです。
個人の問題というよりも、日本の働き方に構造的な課題がありそうだと感じます。
エン転職の「やりがいに関する調査」(2025年)のデータもあわせて見てみます。
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 仕事にやりがいは必要と思う人 | 95% |
| 現在やりがいを感じている人 | 63%(頻繁に12%、時々51%) |
| やりがいを感じない理由:給与や役職が上がらない | 45% |
| やりがいを感じない理由:同じ仕事の繰り返し | 31% |
95%もの人が「やりがいは必要」と感じているのに、「頻繁にやりがいを感じる」と答えた人はわずか12%です。
残りの大多数は「たまに感じる」か「感じない」のどちらかにいます。
「同じ仕事の繰り返しでやりがいを感じない」が3割を超えているのも見逃せません。
ルーティンに飽きるという感覚は、職種や年齢を問わず広く存在しています。
こうした数字を見ると、「仕事がつまらない」と感じている自分がおかしいわけではないことがわかります。
ただ、問題は、この状態をそのまま放置してしまうことにあります。
放置すると何が起きるのか
僕自身の経験と、組織コンサルとしてさまざまな企業の現場を見てきた中で感じている「放置のリスク」を3つに分けて整理します。
どれも最初は小さな変化で始まるので、気づきにくいのが厄介なところです。
成長にブレーキがかかる
仕事がつまらないと感じている時、人は無意識に「最低限のことだけやればいい」というモードに入ります。
新しいやり方を試そうとか、もっと良くならないかと考える余裕がなくなる。
僕も経営企画時代、つまらないと感じていた時期は、言われたことをこなすだけの日々でした。
会議では発言を求められない限り黙っていたし、改善提案のようなものは一切しなかった。
振り返ると、あの半年間で身についたスキルはほとんどなかった気がします。
コンサルとしてクライアント企業を見ていても、同じパターンに出くわします。
「最近元気がないな」と感じるメンバーを深掘りしてみると、仕事に面白さを見出せていないケースが多い。
そしてその状態が続くと、周囲との差が少しずつ開いていきます。
主体性が失われると、仕事の質も下がります。
上司からの評価にもそれは反映されますし、「この人に任せてみよう」という声もかかりにくくなる。
成長が止まること自体は目に見えにくいから厄介です。
半年、一年と経ってから「あれ、あの頃から何も変わっていないな」と気づく。
その時間は戻ってきません。
じわじわと心身に影響が出る
「つまらない」という感覚は、最初は軽い倦怠感のようなものです。
でもそれが長引くと、知らないうちに慢性的なストレスに変わっていきます。
厚生労働省の令和6年 労働安全衛生調査では、仕事で強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者は68.3%と報告されています。
ストレスの内容として多いのは「仕事の量」(43.2%)、「仕事の失敗、責任の発生等」(36.2%)、「仕事の質」(26.4%)です。
これらは一見「仕事がつまらない」とは別の話に見えるかもしれません。
ただ、仕事に意味を感じられない状態が続くと、同じ業務量でもストレスの感じ方は変わります。
やりがいがあればこなせる量も、つまらないと感じていると「重荷」に変わる。
僕自身、経験としてそれを実感しています。
横浜市立大学と産業医科大学の共同研究(2025年)では、メンタルヘルス不調による日本全体の社会経済的損失が年間約7.6兆円と推計されています。
そのうち約7.3兆円が「プレゼンティーイズム」、つまり不調を抱えたまま出勤している状態によるものです。
欠勤よりも「出勤しているけど本調子じゃない」ほうが、はるかに大きな損失を生んでいるということです。
これは組織全体の話ですが、個人レベルで考えても見過ごせません。
食欲の低下、睡眠の質の悪化、休日も気分が晴れない。
そうした小さなサインを「疲れているだけだろう」と流してしまうケースを、僕はコンサルの現場で何度も目にしてきました。
キャリアの選択肢が狭まる
仕事がつまらないまま数年が過ぎると、キャリアにも影響が出ます。
これが最も見えにくく、最もダメージの大きいリスクだと個人的には思います。
成長が止まっている期間は、転職市場で語れる実績が積み上がりません。
面接で「この時期は何をしていましたか」と聞かれた時に、具体的なエピソードが出てこない。
「日常業務を回していました」では、正直なところ評価されにくいのが現実です。
社内でも同じです。
「あの人に新しいプロジェクトを任せよう」と思われるのは、日頃から前向きに取り組んでいる人です。
つまらないと感じながら淡々とこなしている姿は、周囲にもそれとなく伝わります。
「いつか転職すればいい」と考えているうちに、転職するための材料がなくなっている。
これが一番怖いパターンだと僕は思っています。
30代の転職相談で「直近2年間の実績は?」と聞かれて言葉に詰まる人を、僕は少なからず見てきました。
選択肢は、動ける時にこそ広がるものです。
なぜ仕事が「つまらない」と感じるのか
放置のリスクを書いてきましたが、そもそもなぜ仕事を「つまらない」と感じるのか。
ここを整理しておかないと、対策の取りようがありません。
僕が組織コンサルとして多くの企業の社員と話してきた中で、「つまらない」の原因は主に4つに分類できると感じています。
- 同じ業務の繰り返しで新鮮さがなくなった
- 自分の仕事が会社や社会にどうつながっているのか見えない
- 自分で判断できる範囲が狭く、裁量がほとんどない
- やったことに対する手応えやフィードバックが返ってこない
どれか一つだけが原因というより、いくつかが重なっているケースが多いです。
たとえば「ルーティン化」と「手応えのなさ」がセットで出てくることはよくあります。
また、同じ「つまらない」でも、入社3年目と10年目では中身が違います。
若手の場合は「自分に合っていないのでは」という不安が混ざっていることが多い。
中堅以降になると、「この先もずっとこの繰り返しなのか」という閉塞感に近い感覚になる。
自分がどの段階にいるかによって対処法も変わるので、まず現状を正確に把握することが重要です。
大事なのは、「つまらない」の正体を分解して言語化することです。
漠然と「つまらない」だと対処のしようがないですが、原因が見えれば手の打ちようがあります。
たとえば「同じ業務の繰り返し」が原因であれば、仕事の進め方や順序を少しだけ変えてみる。
「成果が見えない」のであれば、自分なりの指標を一つ決めて追ってみる。
「裁量が少ない」のであれば、上司に「ここは自分のやり方で試させてほしい」と一度言ってみる。
原因の特定が、すべての出発点です。
転職の前に、今の仕事でできることがある
「仕事がつまらない、だから転職しよう」と考える人は少なくありません。
もちろん環境を変えること自体が有効な場合もあります。
業務内容や組織の体質がどうしても合わないのであれば、転職は立派な選択肢です。
ただ、僕の経験では、「つまらない」の原因が自分の仕事への向き合い方にあった場合、転職しても同じ壁にぶつかることがあります。
新しい職場でも最初の数か月は新鮮だけど、慣れてくるとまた同じ感覚が戻ってくる。
そういう人を何人も見てきました。
逆に言えば、今の場所で「つまらない」を解消できたなら、それは転職先でも通用する力になります。
環境に依存しない「仕事を面白くする技術」を持っている人は、どこに行っても強い。
だからこそ、今の環境で一度試してみてほしいことがあります。
それは、日々の業務に自分なりの「仕掛け」を入れてみることです。
日本教育工学会に掲載された研究でも、仕事にゲーム的な要素を取り入れる「ゲーミフィケーション」の手法が、従業員のポジティブ感情や自律的な行動を促進し、仕事の質を高める可能性が示されています。
具体的にどういうことかと言うと、たとえばこんな工夫です。
- 定型のメール作成を「何分で終わらせられるかのタイムアタック」にしてみる
- チームへの報告を「前回よりわかりやすく伝えるチャレンジ」として捉えてみる
- 毎月の定例レポートに、一つだけ新しい切り口を入れてみる
- 苦手な作業を「経験値稼ぎ」だと思って、あえて回数をカウントしてみる
バカバカしいと思うかもしれません。
でも、こうした些細な工夫でも、仕事への意識は変わります。
僕自身、経営企画時代に「月次レポートのフォーマットを毎月少しずつ改善する」という自分ルールを作ったことがありました。
誰に言われたわけでもないし、評価されたわけでもない。
でもそれだけで、レポート作成が「こなす作業」から「ちょっとした実験」に変わったのを覚えています。
この考え方を体系的にまとめた本として、田中耕比古さんの『仕事を面白くするギミック50』(明日香出版社)が参考になります。
仕事をRPGのように捉えて、日常業務に50の「ギミック」を組み込むというコンセプトの一冊です。
「仕事の意味を書き換える」「仕事を高速化する」「人を巻き込む」「成長を加速させる」といった章立てで構成されていて、すぐに試せるアイデアが具体的に紹介されています。
著者の田中さんはアクセンチュアやIBMを経て起業された方で、コンサルの現場経験をベースにした実践的な内容になっています。
「仕事を客観視して、そこにあるルールを理解して上手に攻略する」というスタンスは、今の仕事に閉塞感を感じている人にとって一つの突破口になると思います。
大きく環境を変える前に、まず今の仕事の中でできる工夫から始めてみる。
それでもダメなら転職を考える、という順番でも遅くはないはずです。
まとめ
「仕事がつまらない」と感じること自体は、ごく自然なことです。
調査データを見ても、働く人の半数近くが似たような感覚を抱えています。
ただ、それを「仕方ない」と放置してしまうと、成長の停滞、心身への影響、キャリアの選択肢の減少といった形で、じわじわと自分を追い込んでいくことになります。
まずは「なぜつまらないのか」を分解してみること。
そして、転職を考える前に、今の仕事に小さな仕掛けを入れてみること。
僕自身、経営企画部で燻っていた時期にそれをやっておけばよかったと、心から思います。
この記事が、今の仕事に「つまらなさ」を感じている方の参考になれば嬉しいです。
最終更新日 2026年7月24日